鰹節

ヨーロッパで手に入りづらい日本食品や食材4選

欧州には駐在員として来る人、現地で就職先を見つけた人、ワーキングホリデービザを取得、留学や研究で来る人、そんな夫や妻に一緒に来る人、またはヨーロッパ人の恋人と結婚して移住に来る人、そしてもちろん旅行でヨーロッパに来る人など、ヨーロッパには背景が様々な日本人が各国に住んでいます。

ヨーロッパに住むそんな日本人誰しもが悩む問題が食べ物です。 海外に住む日本人はヨーロッパ人の食生活とは大きく違い、長期間住んでいると日本食が恋しくなってきます。

しかしこの食習慣の違いから、日本でいつも買っていた食材が近所のスーパーマーケットに行っても見つからないことがしばしばあります。また、同じ食材を見つけたところで、買ってみたら日本の味と全然違うということも珍しくありません。ヨーロッパで日本人が直面する、手に入りづらい食材や味が違うものについて見ていきます。

 

海外で多くの日本人が抱える食材調達の難しさ

ヨーロッパと一口に言っても各国で在留邦人の多さや日系企業の進出度合いはまちまちで、国によって日本の食材や馴染みのある食材のアクセスの難易度は変わります。 イギリスやドイツ、フランスなどはヨーロッパの中でも日系企業も比較的多く進出しており、たくさんの日本人が住んでいる分、日本の食品のアクセスも容易です。

一方、東欧に行くにつれて在留邦人も少なくなり、日本の食品への需要も少ないせいか取扱量も減っていき調達の難易度も上がります。中国や韓国ブランドでも似たような食品もありますが、今回はそれらを除外して日本のブランドの食品についてお話しします。

 

本みりんと料理酒

意外にも手に入りづらい調味料が日本食を作る上で多く使う本みりんや料理酒です。みりん風調味料はアジアンショップや日本の食品を取り扱うお店では見つけられますが、本みりんはあまり見かけません。

これには理由があり、本みりんと料理酒にはアルコールが含まれているからです。本みりんも料理酒もアルコール度数が14%前後になり、酒税がかかっています。

また、国によってはアルコールの入った食品の販売規制があり、アルコールを売るには別途許可を得たりする必要があります。例えばスウェーデンではアルコール度数3.5%以上の飲料はスーパーマーケットでは販売ができず、3.5%以上のアルコール商品はSystembolagetという国営のお店しか販売ができません。しかしSystembolagetは飲料用のお酒を販売するお店なので料理用の食品は取り扱っていません。

このように国によっては規制の影響で小売店が本みりんや料理酒を販売することが難しく、また酒税がかかる関係で値段も高くなってしまい小売店からすると販売が難しい商品になります。

他方、みりん風調味料はアルコール度数が1%未満なので酒税がかからず安価になり、ヨーロッパのスーパーマーケットなどでも取り扱いが容易になるという事情があります。

 

鰹節

お豆腐やお好み焼きのお供、出汁の一つとしても一般的、おにぎりで定番の具であるおかか、日本人に身近な商品で重宝されている鰹節ですが、実はこれもヨーロッパでは入手が難しい食品です。

ヨーロッパにきたことがある人や、住んだことがある人は鰹節を見かけることが無いことに気づいているかもしれませんが、そもそもなぜヨーロッパでは鰹節がないのでしょうか。

鰹節には商品の生成過程で付着する「ベンゾピレン」という発癌性物質がEUの基準を超える含有量のために問題視しており、日本からの輸入ができなくなっています。日本人からすれば長年食べている鰹節が身体に悪いのか驚きや疑問が出ますが、食品の規制などは国によって異なっており、こういった現象が起きるのです。

ヨーロッパでも一部で鰹節が入手できますが、販売されている食品はEUの基準を満たし作られた商品です。そんなややこしい鰹節ですが、EUで鰹節を巡る話に一つ興味深いできごとがあります。

2015年にイタリアで行われたミラノ国際博覧会が行われました。日本はミラノ国際博覧会でイタリアやヨーロッパで日本食をアピールする絶好の機会と捉え、日本食を大々的に売り込みを目指しました。しかし鰹節が上記で紹介した食品の輸入規制に引っ掛かりことになります。そこで日本政府はEUなどと交渉し、ミラノ国際博覧会会場内で消費されるものに限り特別措置として使用ができると特例を認めてもらいました。


日本人にとってはどこのスーパーでも買える基本的な調味料の一つですが、出汁を取る上で欠かせない鰹節は日本とEUが国ぐるみで動くほどの食品でもあります。

 

薄切り肉や細切れ肉

細切れ肉

豚肉の生姜焼きや牛丼、炒め物など料理をする人にとってスライスされたお肉や細切れ肉は様々な料理に登場する日本人には人気の食材です。

しかし、実はこのようにカットされたお肉はヨーロッパのスーパーではまず見かけません。ヨーロッパではお肉と言ったらステーキや煮込み料理、またはハンバーグやミートボールなどのひき肉になってしまい、スライス肉や細切れを使う料理がありません。

スーパーやお肉屋さんではスライサーがあるので、店員にお願いすればスライス肉を作ってもらえるかもしれませんが、店員はスライス肉など用意したことが無い人が多くリクエストしても困惑されて日本人の意図通りのスライスや細切れ肉を作ってもらえなかったり、豚肉はイスラム教のハラール肉(イスラム教の認証された方式でお肉を作っているか)と混ぜられないので断られることもあります。

日本の食材を売るお店やアジアンショップに行けば買えることもありますが、上で紹介した物とは別の難しさがあります。

みりんや鰹節はオンラインでお取り扱いさえされていれば購入できますが、お肉の難しいところは薄切り肉も細切れ肉も生鮮食品になりますのでオンラインショップで購入ができない点です。

生活圏で買えない場合は非常に手間ですが、家庭用のスライサーを購入して作るか、自分でお肉をカットするしかありません。

 

漬物類

漬物類はごはんとの相性が抜群ですが、ヨーロッパでは主食はジャガイモとパンになってしまい日本の漬物類は中々見つけられません。

タクアンや寿司用のガリなどはまだ見つけられますが、きゅうりの漬物や柴漬けなどは探す難易度がグッと上がってしまいます。

また漬物類は本来種類も多く、メジャーな漬物から地域限定であまり流通されないものまでありますが、そう言ったローカルな漬物はヨーロッパで買えるものは中々ありません。

例えば、九州では比較的ポピュラーな漬物に高菜漬けがあります。高菜漬けは豚骨ラーメンなどにもトッピングされていたりと日本人には馴染みがあるものですが、九州の出身の方には普段から食べる漬物の一つです。しかし高菜漬けをヨーロッパで入手するにはロンドンなど一部でしか手に入らず見つけるのは難しいです。

漬物類は英語でいわゆる「acquired taste」の食品です。つまり食べ慣れていって美味しいと感じる食べ物になり、外国人が初めて食べて直ぐに美味しいと感じることはあまりありません。

何度か食べるうちにだんだんと好きになる類のものですので、中国人や韓国人からの需要もほとんど見込めず、日本人でも好き嫌いの分かれやすい漬物類はヨーロッパでは手に入りづらい食品の一つです。