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日本の出汁とドイツのスーパーで買える魚ブイヨン(ストック)の違い

日本の出汁とドイツのスーパーで買える魚ブイヨン(ストック)の違い

出汁といえば和食の基本調味料の一つとして欠かせない大事な食材の一つです。
お味噌汁に煮物、おでん、暖かい蕎麦やうどんの汁に果てはカレーなどにも使用できるといった万能感があって大変重宝します。
軽くて小さく、大変便利ですが、便利すぎて時には在庫を切らしてしまうことも起こります。

日本に住んでいれば気軽に近くのスーパーで買いに行くことができますが、ドイツに住んでいると近場で出汁を変えず、困ってしまうケースも出てきます。
そこで、止むを得ずドイツの近所のスーパーでも買える現地の魚ブイヨンを使用せざるを得なくなる、そんな経験はありませんか?

【日本の出汁VSドイツの魚ブイヨン】違いを解説していきます!

そもそも、日本の出汁とドイツやヨーロッパで売っているブイヨンはどう違うのでしょうか?
この記事ではヨーロッパで買えるブイヨン類の説明をして違いをお伝えしていきます。
また、魚ブイヨンで作ったお味噌汁の話もこの記事内で解説していきます。

日本の出汁



昔から日本は島国で海の幸の恩恵を受けて生きていました。
日本の出汁の歴史は古く、縄文時代の頃から魚などを煮出して食べていたのではないかと言われています。
文献などからも奈良時代や平安時代にはカツオや昆布なども献上品として使われていたと考えられ、公家など上流階級の台所に海鮮が届いているのが想像されます。
戦国時代の文献には「だし」の記述があり、日本の歴史と深く結びついていることがわかります。

さてそんな日本の出汁ですが、かつおや昆布、椎茸、貝類や蟹などから取る出汁もあれば、ラーメンなどによく使われるような鶏ガラや豚など様々な種類があります。
しかし普段使いの食材で言えば、かつお出汁が一番ポピュラーで、昆布や椎茸なども人によってはしばしば使われるのが一般的ではないでしょうか。

出汁は基本的に数分でエッセンスを取り出すという一瞬の工程ですが、出汁を作るまでに鰹節や乾燥した椎茸、昆布など前工程に非常に手間暇をかける食材です。
キレがあり旨味が凝縮されている日本の出汁は和食を料理する上で欠かせず、味全体をまとめ調和を生み出すという日本食の土台ともいうべき存在です。

ヨーロッパのブイヨンやフォン


もちろんヨーロッパにも日本の出汁に相当する食品があります。
フランスでは出汁に相当するものが二つあり、それがブイヨンとフォンです。
先にフォンの説明をしますと、フォンはソースに使用されます。

一例として、あまりフランス料理に馴染みのない方でも、「フォン・ド・ヴォー」という名前を聞いたことがあるかと思います。
フォン・ド・ヴォーは仔牛肉や骨、香味野菜などを長時間煮込んで作る出汁の一種です。
フォン・ド・ヴォーはステーキやハンバーグ、ムニエルなどのソースのほか、ビーフシチューの材料などにも使えます。

一方のブイヨンですが、こちらはスープやポタージュを作る時に使われる食材です。

ブイヨン(Bouillonはフランス語ですが、イタリア語ですとブロード(Brodo英語だとブロス(Broth)またはスープストック(Soup stock)と呼ばれています
肝心のドイツ語ですが、ドイツ語だとbrüheと書き、カタカナで表記が難しいのですが「ブルへ」のようになります。

フォンは肉の味がメインに出ますが、ブイヨンは野菜の味が強く出ており、フォンよりも優しくなります。
ベジタブルのブイヨンもありますが、鶏、牛、魚などの種類があり、鶏のブイヨンが一番一般的な印象です。

さて、ブイヨンはどう作られるかというと、日本の出汁とは工程が大きく変わります。
日本の出汁は原料を作るまでに手間暇がかかっているのに対し、実際に使う際は数分でエッセンスを取り出します。
それに比べてブイヨンは日本の出汁のような前工程は手間をかけない代わりに、魚や肉、香味野菜などを長時間煮込んで作ります。
ブイヨンはゼラチン質の旨味でコクがあり、冷えるとこのゼラチン質が固まるのが特徴で、肉料理やスープなどの塩気の中心の一つになります。

ドイツで気軽に手に入るブイヨン


ヨーロッパではこのブイヨンを売っているメーカーはいくつかありますが、有名な会社だと、「マギー」と「クノール」の二社が挙げられます。

Brunosingu, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

マギー(Maggi)はスイスの食品会社ネスレが所有するブランドであり、一方のクノール(Knorr)はドイツ発祥ではあるものの、現在はイギリスやオランダなど多国籍企業であるユニリーバが所有しているブランドです。

Unilever, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons

ドイツでは両方見かけますが、個人的にはクノールの方がよく見かける印象があります。
マギーもクノールも両方のブイヨンを使ったことがありますが、大きな違いは感じませんので、どちらを買っても料理に問題はありません。

日本の出汁とドイツで手に入る魚ブイヨンの違い:味噌汁



さて、ブイヨンは液体タイプのものもありますが、固形のものが一般的で、4個入りや8個入り、12個入りなどが1ユーロ以下〜2ユーロなどで買えます。

お味噌汁は出汁と味噌が最低限の食材で、出汁の代わりに魚ブイヨンを入れた場合どうなるかですが、魚ブイヨンを使用すると味が変わってきます。
筆者が魚ブイヨンでお味噌汁を調理したことがありましたが少しながら味に違いを感じました。

そもそも、お湯に魚ブイヨンを溶かすと、煮干しラーメンのスープのような香ばしい香りが出ます。
そこに味噌を入れますと、日本の出汁で作ったお味噌汁よりも塩気が強く感じました。
できたお味噌汁は十分食べられる味でしたが、日本人からすると味に違和感を覚えるかと思います。

ちなみに出汁と魚ブイヨンの原材料を確認すると違いがより見えてきます。
一例として、味の素のほんだしとクノールの魚ブイヨンの原材料を比較してみましょう。

味の素の原材料をウェブサイトで見てみると以下になります。

食塩(国内製造)、砂糖類(砂糖、乳糖)、風味原料(かつおぶし粉末、かつおエキス)、酵母エキス、酵母エキス発酵調味料/調味料(アミノ酸等)

一方のクノールの魚ブイヨンの原材料をウェブサイトから見てみると以下になります。

「ヨウ素入り食塩、香料(E621、E635)、完全水添パーム油脂、コーンスターチ、加水分解植物性タンパク質、パーム油、認可香料(魚、甲殻類、軟体動物、卵、牛乳、セロリを含む)、タラの魚粉末(甲殻類、軟体動物を含む)、ガーリック油(甲殻類を含む)、玉ねぎ、香辛料、砂糖、ガーリック、クエン酸を含む。」

見て分かる通り、魚ブイヨンの方がたくさんの食材を使用しており、また、100g辺りの食塩の含有量もほんだしは約43グラムに対し、魚ブイヨンは約50グラム*となるので、魚ブイヨンを使用した場合は塩気が強くなる理由が確認できます。(ウェブサイトより、ナトリウム19701(mg)x2.54÷1,000=50.04)

まとめ

上記でも書いたように、魚ブイヨンはラーメンのスープには合っているが、お味噌汁や他和食を料理する上では、魚ブイヨンより日本の出汁の方が食べ慣れた懐かしい味がつくれるでしょう。
結論としては代用はできるが、やはり和食には日本の出汁が最適でしょう。

和食を作る際はぜひ日本のお出汁を使って料理されるのをオススメします。

WasaKanae
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